珍しい白い石灰岩による段々畑
天まで届くかのような石積みの斜面。春には菜の花、秋にはミカンが色づき、白い石灰岩や青い空とのコントラストが美しい。ここは西予市明浜町にある「狩浜の段々畑」。数えることさえ気の遠くなりそうな石積みを築くために、先人たちはどれほどの労力を費やしたのだろうか。そんな思いを抱くほどの圧巻の景観が広がる。
リアス海岸が続く宇和海沿岸では少ない土地を活用しようと、多くの段々畑がつくられた。一般的には身近な岩石を使用し、狩浜の段々畑は石灰岩が使われている。石灰岩はかつて南の暖かな浅い海に生息していたプランクトンなどの生き物の死がいによってできたもの。明浜町では、江戸時代後期から石灰岩の採掘や加工が始まった。一時期は朝鮮半島や東南アジアに輸出し、「白い村」として栄えた歴史がある。また、石灰岩の中に宿る「うど貝」は明浜町の名物料理の一つだ。
実は、この地域の柑橘栽培も石灰岩の恩恵を受けている。急斜面による水はけの良さ、海からの潮風が運ぶミネラル、太陽からの直接光と石垣・海からの照り返しの光によって段々畑は柑橘栽培に最適な環境とされる。さらに、石灰岩の土壌はカルシウムを補い、肥料や雨で酸性になりがちな土壌を中和する。このように恵まれた土壌で高品質な柑橘を栽培している狩浜の段々畑であるが、かつては様々な作物が栽培されてきた歴史がある。