先人たちの汗と知恵の結晶を、今も大切に守り続ける
新緑の季節には、若苗と水面のコントラストが美しく、秋には稲穂が黄金色に色づく日本の棚田百選「堂の坂の棚田」。季節によって多彩な表情を楽しむことができ、多くの写真愛好家が訪れる人気のスポットだ。先人たちは、少しでも収穫を得ようと、近くを流れる堂の坂川から水源を確保し、比較的傾斜がゆるやかなこの地に開墾した。巨石や「水抜き」と呼ばれる石を組み合わせた暗渠をふくむ約1.2ha石積みの棚田からは、当時の石組技術の水準の高さがうかがえる。
現在は6軒ほどの農家が約70枚の田を耕し、毎年、80俵ほどの収穫がある。地区内は高齢化が顕著だが、農家の皆さんは今もなおこの美しい棚田を守り続ける。
この美しい田園風景は、人々の思い と努力の結晶だ。棚田とともに近隣には東屋風の茶堂が59か所残っており、お遍路に飲食をもてなす「お接待」の場として人々を和ませる。
田穂の山里には爽やかで、ゆったりと、そしてどこまでも優しい風が吹いている。